大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)1883 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人河鰭義三郎の上告趣意書は末尾に添えた別紙記載の通りであるが、問題は

結局被告人に殺意があつたか否か、すなわち本件の犯罪が殺人か傷害致死か、に帰

着する。

(一) 上告論旨第一点は、原判決が援用した被告人に対する検事の聴取書中、

原審が「死なうと生きようと何うなつても構わぬと云ふ気持になつた」旨の供述の

みを証拠に取り、「当時の気持は今考へて見て良く判りません」との供述を無視し

たことに、採証の原則に反する違法がある、と非難するのであるが、この二つの供

述は別々の機会にされたのであつて、被告人の犯罪事実を認める供述と否認する供

述とがある場合にそのいずれを採るかは裁判官の自由心証にゆだねられているとこ

ろであるから(昭和二三年(れ)第一四六号、二四年二月九日言渡大法廷判決)、

原審が前の供述を証拠に採つて事実認定をしたことは違法でなく、論旨は理由がな

い。

(二) 上告論旨第二点、第三点は、原審が被告人の殺意を本人の自白のみによ

つて認定し、殺意の点を除く余の事実で証明されたのみならば傷害致死であるべき

ものを殺人として断罪したのは違法なりとする。しかし、犯罪事実の一部につき証

拠として本人の自白があるだけで他の証拠がない場合でも、その自白と他の証拠と

を綜合して犯罪事実全体を認定することは、刑訴応急措置法第一〇条第三項の規定

に違反するものでないこと、当裁判所の判例とするところであつて(昭和二二年(

れ)第一三六号同年一二月一六日言渡第三小法廷判決、昭和二二年(れ)第一五三

号、二三年六月九日言渡大法廷判決)、論旨は理由がない。

よつて旧刑事訴訟法第四四六条に従い主文のとおり判決する。

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以上は裁判官全員一致の意見によるものである。

検察官 柳川真文関与

昭和二四年五月一〇日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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